音楽の世界の仕事って大きく5つにわけられるんですね。
①ソロができる ②室内楽ができる ③オーケストラができる ④教育・学校の先生 ⑤音楽祭などのプロデュース
当時の僕はフランスにいる外国人なわけで、卒業後、ちょこちょこ演奏の仕事をいただいたりはしましたが、それ以上の仕事をするのは難しく、このままではまずいと思って日本に帰国することにしたんです。
ただ、僕は日本の大学は出ていない身。つまり日本の音楽界に友達や先輩、先生がいないわけです。誰も僕を知らない。だから日本に帰ってすぐの頃は作曲家の先生に電話して、「フランスから帰ってきて、こんな人と現代曲を演奏して、こんな奏法もできます」なんて受話器越しにクラリネットを吹いて、何とか使っていただけないかと直談判したりもしていましたね。あの図々しさはもうないけれど、そのおかげで仕事をもらえていました。
また東京フィルハーモニー交響楽団(東フィル)のオーディションに受かって、そこでも演奏をさせてもらいました。東フィルで一番良かったのはオペラをたくさん経験できたことですね。当時の世界一流の音楽家たちが日本に来て、素晴らしい歌手といっぱい演奏できたのは僕の栄養になりました。